『JICON 』 作り手 今村 肇
歴史を感じる建物があちらこちらに残る有田の皿山通り。
JICONを作る今村さんの工房は、この通りにある古い町屋を改修したギャラリーに併設されています。
やきものを作る作業場というと、職人さんが轆轤の前に座って一定のリズムで土をカタチに変えていくというイメージがありますが、今村さんの工房で目に入るのは轆轤ではなく、大きくて白い石膏の型。有田では昔からよく見られる製法で、型に陶土を流し込むことによって、安定した量を生産できるという特徴があります。
「型って、一見すると手間がかからないように思われるかもしれませんが、作るカタチによってやり方が違うし、実は細かい手作業も必要なんです」と笑って話す今村さん。
一点一点を手で作っていくのとは違い、機械の力を借りてある程度の量を作っていくJICONの製造方法は、表面だけをなぞると何となく「量産品」とも捉えられてしまいますが、釉薬のバランス調整やデザイナーの要求に答えて少しでも完成度を上げようとする見えない部分の創意工夫があってこそ。
「とにかく、ひとつひとつ想いを込めて作ることが、使う人に何か伝わるんじゃないかと。そう思って作ってますね」分業制が発達し、それぞれ専門性の高い職人が仕事をしている有田にあって、今村さんは、型の原型となるマスターもご自身で彫っているというから文字通り「一から十まで」全てを把握し、手掛けていらっしゃいます。
どうやって作っているのか、これまでも色々な話しを聞いて、なんとなく理解したつもりでいたのですが、作り手のこういうストレートな想いは、何よりも響きます。