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安比塗漆器工房をたずねて

安比塗漆器工房

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『漆器』と聞くと、何だか少しだけ身構えてしまうのは、
陶器や磁器ほど身近ではなく、扱い方も難しそうとか、値段がそこそこ高いだとか、そもそも良さがいまいち分からないとか、たぶんそんな理由がいくつか重なって敬遠している人も多いのではないかと思います。

正直言うと僕もそんな一人で、10年ほど前までは間に合わせの拭き漆の椀しか持っていませんでした。当時はそれでも特に不満は無かったのですが、あるとき旅先の盛岡でたまたま目にした朱塗りの椀が気に入り、思いがけず購入したのが安比塗(あっぴぬり)との出会いです。

以来、食卓にぬりものが並ぶようになってから、はじめは鈍かった表面が艶を帯びてくる変化や、唇をつけた時のしっとりした感触など漆器ならではの心地良さがあるんだと知りました。今年の夏にひさびさに訪れた岩手では、前回行けなかった工房へもお邪魔することができ、実際の作業も見せて頂きました。

現在、職人(塗師)として働いていらっしゃるみなさんは、漆芸家をめざす若手が漆器づくりについて体系的に学べる町の技術研究センターを卒業された後、この工房に入られたとのこと。塗師になるには、親方について技を盗んで学ぶという徒弟制度のイメージが強かったので、そういう機関があるのは意外でした。

聞くと、戦前はこの地域で「荒沢漆器」という名前で漆器が作られていたそうですが、戦後の生活スタイルの変化もあり、一度は伝統が絶えた歴史があるそうです。その後、昭和58年にセンターができ地域の漆器生産を再興してからは、将来の塗師を育てる役割も担い、これまで60名もの方が卒業されていると伺いました。

今回の展示イベントでは安比塗漆器工房だけではく、センターを卒業され個人の作り手として活躍されている村上 尚美さん、坂根 雄心さん、佐々木 暢子さんの作品も並びます。それぞれの色合いや個性、持った時の感触など実際に手に取ってもらい、漆はじめの一歩になったら嬉しく思います。