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『山内染色工房』 作り手 山内武志

 

山内武志 型染 ぬいや

山内武志 型染 ぬいや

山内武志 型染 ぬいや

山内武志 型染 ぬいや

2月の寒い日に山内さんの工房を訪ねると、薄暗い作業場で手を動かしていた山内さんが手をとめ、ニコっと笑って出迎えてくれました。「今日は天気はいいけど、風が強くて外で布を乾かせないんだ。それでちょっと手が空いたんで、藍でこの暖簾を染めてみた。面白いだろう?本当は片面づつキッチリと丸がズレがないように染めるのを、型紙をずらしてやるとこうなる」

昨年の夏に初めてお会いした時もそうだったけれど、山内さんはごく自然に、そして気さくに僕らに接してくれる。
すすめられて椅子に座り、ふと壁に目をやると芹沢銈介さんの白黒写真。

「先生はね、本当に仕事に厳しかった。それにこだわりがすごいから、今でもときどき怒られた記憶がよみがえるよ。うん、厳しかったし、たまに意地の悪いところもあって(笑)」10代後半で芹沢さんの工房に弟子入りし、その後、家業を継ぐために浜松へ戻ってからも交流は続き、1976年パリで行われたあの「Serizawa 展」にも同行されたそう。

「型染め」とは、型紙を使って布や紙を染める昔からの染色技術。フリーハンドで描くのとは違い、刃物を使って型紙を切り抜き、それを布にあてて糊をおき、色を染め、また糊をおとすという一連の流れで出来上がる。

染料の知識や技法の使い分けなど様々な経験が必要だけれど、何より型を彫るという間接的なやり方で図柄を表現すると、そこに不思議な魅力が生まれるのが面白い。
山内さんのてぬぐいにも、よく単純な〇△□が出てくる。誰もが知っているこの図形を自由な発想で型紙におこすと、やっぱり楽しくてかわいらしい模様になる。

「別に何かを生み出そうとか、イメージが勝手に湧いてくるというのはなくて、色々な頼まれ仕事をやっていくなかで、こうしたらいいんじゃないかとか、次はこうしようとかいうアイデアが浮かぶんだよ」

81歳をむかえて、なお走り続ける山内さん。ご自宅には、芹沢さんの作品のほか先輩である柚木沙弥郎さんの切り絵、そして様々な国の置物が飾られていました。
「別に値段の高い安いは美しさとは関係なくて、自分の目で見て心に響くものを選ぶといいんだよ。100円ショップにだって、よくよく見ると面白いものがあるから」

とらわれず、しなやかに。
モノとの出会い、選ぶ楽しさもそうでありたいと思いつつ、工房をあとにしたのでした。

 

山内武志 型染 ぬいや