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『 紙漉思考室 』 作り手 前田崇治

生活購買店reed 紙漉思考室

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生活購買店reed 紙漉思考室

佐賀県唐津市七山。山あいの小さな街中を抜けて、さらに坂道を登っていくと紙漉思考室さんの工房に着きます。遠くを見渡すと山の尾根が目線に位置するほど標高が高く、道を走る車の音も聞こえない本当に静かな場所です。

「ここに工房を構えてもう10年以上経ちますね。もともと父親が趣味として和紙作りをはじめたのがきっかけで興味を持つようになりました。この道でやっていこうと決めてから、高知で3年ほど修業して戻ってきたのですが、はじめは大変でしたよ。仕事場の環境もそれまでとは違ったので、慣れるのに時間がかかりましたし、そもそもどうやって自分が漉く紙のことを知ってもらうのか、それこそ妻と一緒に営業に行ったこともあります(笑)」

今では建築家やデザイナーから求められる紙を製作する機会も多くなり、「和紙」という昔からのイメージにとどまらない作品を手掛ける前田さん。今回の企画展も、ある時 工房の一角に掛けてあった藍色と白が混ざった印象的なパネルに目がとまり、「これは何ですか?」と訊ねたことがきっかけでした。

話しを詳しく伺うと、前田さんが以前に楮(こうぞ)を藍で染めてもらった特別な原料で和紙を漉く機会があり、その仕上がりがとても美しかったので、パネルに仕立てて壁に飾っていたそう。これをきっかけに、藍のほかベンガラなども使って原料を染め和紙を漉いてみると、白の余白とそれぞれの色が相まって豊かな表情の紙ができたとおっしゃってました。

それでも、今回の企画展について相談を持ち掛けた当初は少なからず迷いを感じていたそう。
「自分はなんと言うか、作家という立場ではなく裏方という意識が強いので、作品としてこれを出すのはどうなんだろうと。もちろん、技術が必要ですし、かなり手間はかかっているので、簡単なことではないんですよ。それでいろいろ考えもしたんですが、今回のイベントをきっかけに紙のもつ面白さを知ってもらって、生活空間の中で使う機会が少しでも増えればいいかなと思って」

前田さんの工房に行くと、いつも奥さんの千陽(ちはる)さんが和紙のトレーとコースターにお茶とお菓子を添えて出してくれる。ふだんから紙を作っているのでそれを使うことはもっともなのだけれど、グラスやお皿まで含めた全体のバランス感覚や細部まで気配りされた二人の感性に触れると、なるほど多くの作り手が信頼を寄せる理由が少し分かったような気がしました。

 

(*写真の一部は、紙漉思考室さんよりお借りしました。)


 

 

『紙漉思考室 展 』

2019.9.21 sat – 9.29 sun
※会期中の店休日 9.24 tue
作り手在店日 9.21 sat / 9.22 sun